2009年に直木賞を受賞した天童荒太氏の「悼む人」。
図書館で文庫を借りてきてよみました、最初。
主人公・坂築静人(さかつきしずと)は
亡くなった人の亡くなった現場をたずねて
死者が「誰に愛され、誰を愛し、どんなことで感謝された」存在かを訊ねて回り
それを彼の心に刻む“悼む”という行為を続けながら旅をしている──。
彼が今どこにいるのか? 生きているのか? 家族はそれさえ知らない。
そして家では母・巡子が末期がんに侵され余命宣告され、
妹・美汐は新しい命を宿している。
静人の旅に同行することになった、倖世は自らが殺した夫の霊に憑りつかれ・・。
父を恨み、世をすねる雑誌記者の蒔野は、静人の旅をうさん臭く思い追いかける・・・。
静人について巡子、蒔野、倖世のそれぞれの視点で描かれることで、
主人公が立体感を持って読者に迫ってくる。
それぞれの持つ「おもり」、静人の存在を通して彼らは解放されていく。
人の命は平等なのか? 無名の人という呼び方は正しいのか? 死とは?
生きるとは生かされるとは?
愛とは? 愛するとは?
ずっしりと思い内容です。
まだ消化できないので、感想は省略します。
本というのは、時折、必要なタイミングで必要な人のところに届けられるのでは?
と思わずにいられませんでした。
母の介護をしているという状況の「今」読むことに
何か意味がある気がしています。
手元においてもう一度、いえ何度も読みたいと思い単行本で購入。
のちに出版された静人の旅の過程を綴った「静人日記」も合わせて読んでみようと思います。
もともと翻訳ものが好きだった飼い主なので、あまり日本人の作家を読んでいなくて
大ベストセラーのこちらも読んでみようかなと。
追記
そういえば、「静人日記」というタイトルを見てすぐ思ったのが
亡くなったアゴタ・クリストフの三部作の一作目の「悪童日記」。
まだ世界が「東西」に分かれていたころに、東から西に亡命した作家が描いた
あまりにも残酷で重い衝撃的な内容に読んだ後はしばらく物語の世界に埋没・・。
自分の周りに、小説の世界が張り付いたているようで息苦しい気持ちになりました。
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